「お芝居ってどうやって創るんですか?」という質問をされる事があります。
正直、運営方法等は団体の方向性によって様々で、一つの答えを導き出すのは難しいので
ガイプロジェクトが運営する「Theatre劇団子」を例にあげて大まかな本番までの流れを紹介してみたいと思います。
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「いつ?」「何処で?」「何をするのか?」
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ただ、やみくもに「やりたいから芝居をする」という公演では趣味の範囲を超えられません。今、どうしてその公演をうたなければならないのか?という目的を明確にする事で
芝居のコンセプトが浮き彫りになってきます。
コンセプトが明確になると、お客様のターゲットも絞られ
宣伝広告などにおける予算の削減にも繋がります。コンセプトのないお芝居は見ていて退屈な事が多い様な気がします。コンセプトがしっかりしていれば、早い段階でその団体の個性が明確になり話題になるのも早いという流れが小劇場界の現状のようです。
私たちが公演を興業として開催する時に、常に考えるのは次の三要素です。
「いつ」・・・
これは開催時期を表します。例えばクリスマスものをやりたいという気持ちがあっても夏に公演をしてしまっては、お客様の気持ちに水を差してしまいます。
当たり前の事のようですが、これは凄く重要な事です。コンセプトを明確にした上で、その芝居に合う季節は春なのか、それとも秋なのか。
そして時事的問題にも配慮が必要です。飲酒運転を撲滅する社会の流れを無視して車の中で酒を暴飲するシーンを作ってしまうのは、得策ではないと言えます。勿論、善人ぶる必要はないのですが、もしお客様の中に被害者の方がいたらと考えれば
おのずと選択肢は限られてくると思います。
逆に社会現象を味方につけるという事も考えられます。スポーツ青春モノをやりたいのであれば、オリンピックやワールドカップの開催年に合わせる事でお客様の好奇心を倍増させたり、宣伝文句をうたいやすくなったりもします。
「何処で」・・・
これは劇場選びの事です。ルーム感の小さいお話、いわゆる六畳一間で成り立つ様な話であるにも関わらず、広い劇場を選んでしまっては空間を埋める事が出来ず、凝縮した空気をお客様に届ける事が出来ません。その逆もまた同じ。ファンタジーの世界を狭い空間で打ち出されても、その不思議な世界観を表現するのは難しいと思います。
演劇にとって大切なのはその世界観にあった空気をいかに創りだすかです。劇場に足を一歩踏み入れた時から芝居は始まっています。
コンセプトを明確にした上で、その雰囲気にあった劇場を選ぶ為に実際に足を運んで客席に座り劇場全体を客観視する事が大切だと思います。
「何をするのか?」・・・
そしてコンセプト。開催時期とその劇場に見合った内容です。誰に届けたいのか?何を訴えたいのか?そしてそれは社会に何を投げかけるのか?
そこが明確でなければ、自己満足と言われても仕方がないかもしれません。
勿論、ただ笑えるだけの芝居やシリアス一辺倒の感動巨編もコンセプトとターゲットが
明確であれば問題ないと思います。
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予算編成
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公演の詳細が具体的に決まると同時に予算編成を組まなければなりません。
また、団体によっては予算から劇場を選ぶ場合もあるので、これといって決まりはありません。劇場費、稽古場代、スタッフ人件費、広告宣伝費、役者へのギャランティ、衣装・小道具費、制作費、機材費、運搬費、大道具費等を劇場の席単価から算出し、その中で興業を成立させます。
例をあげると200席ある劇場の使用料が全日程5ステージで100万円だとすると最大動員1000人÷100万円=1000円、つまり劇場費をペイするだけでもお一人様1000円は頂かなければなりません。お芝居の総予算は大抵、劇場費の3倍はかかるのでチケット料金は3000円になってしまいます。
お客様の負担を出来るだけ軽減しつつ、赤字が出ないようその芝居に見合った料金を設定するか?高すぎるとお客様は入らないし、安すぎると劇団に負債がのしかかる。制作者が一番神経を使う所かもしれません。
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宣伝広告
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広告宣伝の事を考えれば、ここまでの流れは最低でも公演の半年前までには終わらせておかなければなりません。チラシを撒き始めるのが3ヶ月前だと過程して、チラシにのせるキャストやスタッフ集めに奔走するからです。幸い、弊社の擁するTheatre劇団子は劇団で活動しているので、キャストはほぼ劇団員で構成され、スタッフに関しても長年付き合って頂いているスタッフが殆どなので、特に労する事はありません。
ここで大切な事は、一人でも多くのお客様にご来場頂く為に、いかに宣伝活動を広げて行くかです。雑誌・新聞等の各種メディアへの働きかけや、スポンサー取りの為に出来るだけ早く企画書を制作し、足しげく通い詰める期間を設定出来るか?限られた予算の中で、メディアへの露出は最高の宣伝材料になります。ここはないがしろには出来ません。根気よく続ける事が懸命でしょう。
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稽古
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よほど恵まれた環境にある団体でない限り、稽古場のほとんどが活動地区の公民館などです。勿論、本番が近くなればスタジオを借りて、本番同様の舞台面がとれる場所に移動します。稽古を始めるにあたって一番苦労するのは稽古場の確保です。過去の公演における平均稽古日数はおよそ40日。それだけの稽古場を確保するのはかなり大変な作業であり、費用もかかります。情報網を広げていかに安い所を長く借りられるか?制作さんの腕の見せ所です。
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劇場入り・本番
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しっかりと稽古を積み、劇場に入ります。演劇の世界では一般に劇場に入ることを「小屋入り」と言います。芝居の規模によって様々ですが舞台セットの仕込みに1日、場当たり・リハーサルなどで1日必要になる事を考えると最低2日は仕込み日として設定するのが無難かもしれません。ここで初めて本番同様の最終チェックが行なわれます。舞台監督さんの仕切りのうまさと、演出家の素早い判断が試される時です。
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公演終了後
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団体によっても異なりますが、公演における決算の清算会を行なう所が多いようです。活動費用の流れを明確にする事で、制作との信頼関係がアップします。万が一赤字になった場合は、何故そうなってしまったのかを全員で話し合い同じ事を繰り返さない為に、何をすべきかを明確にしなければなりません。お金の事で解散しなければならなくなる事程、悲しい事はありません。そして勿論、ホームページなどでの終了報告。各種メディアへのフォローを怠たらないよう、注意しましょう。